大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

岐阜地方裁判所 昭和30年(行モ)1号 決定

申請人 武藤嘉門銅像建設反対期成同盟

被申請人 岐阜県知事

主文

本件申立を却下する。

申立費用は申請人の負担とする。

理由

申請人は被申請人が申請外武藤嘉門銅像建設期成会に対し昭和三十年十一月十九日附なした岐阜市司町一番地岐阜県議会議事堂正面玄関前石畳東へ一間同建物から東へ九尺の位置を南西の角にして三間四方の正方形の土地に対する使用許可処分の執行を停止する旨の裁判を求め、その理由として被申請人は申請外武藤嘉門銅像建設期成会に対し昭和三十年十一月十九日附で岐阜県所有にかゝる申立の趣旨記載の土地(以下単に本件土地と称する)の使用を許可した。

然しながら被申請人の右使用許可処分は次の理由により違法である。即ち被申請人は岐阜県知事として岐阜県有財産の管理保全に関し重大なる責任があるにも拘らず、その職責を怠り申請外武藤嘉門銅像建設期成会が昭和三十年十一月十五日附で本件土地の使用許可願を申請したのに対し岐阜県議会の承認をも得ず異例に近い僅か四日間にしてその使用を許可したものである。而して岐阜県住民の利害に最も関連のある県下第一等ともいうべき本件土地がかゝる杜撰な手続によつて使用され、しかも将来永久にわたつて占有されんとすることは岐阜県住民の利益を著しく阻害するものである。叙上の如く被申請人のなした本件使用許可処分は違法であるからこれが取消を求めるため訴訟を提起したが、右処分の執行によつて本件土地が武藤嘉門銅像建設のため使用占有されるならば、岐阜県住民の利益を著しく阻害することになるばかりでなく公共の福祉にも反する結果となるものである。然るに、申請外武藤嘉門銅像建設期成会の銅像建設工事は著しく進捗中で急迫した状態にあるので、本件土地使用許可処分の執行を申請人、被申請人間の右使用許可処分取消請求事件の判決確定に至る迄停止する旨の裁判を求める。

というのである。

よつて按ずるに、被申請人のなした本件処分行為が申請人主張の如く行政処分なりや否や仮に行政処分なりとしてその主張の如く違法であり取消を免れないものであるかの点は暫く措き、申請人は本件土地を使用するにつき具体的な権利を有することについて何等の主張並に疏明をなさないから、本件処分行為により仮に本件土地が第三者の使用占有するところとなつても申請人はその権利を侵害される虞がないものといわねばならない。

然らば申請人は右処分の執行停止を求めるにつき何等の利益を有しないものといわねばならないから之を却下すべきものである。

よつて申立費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文の通り決定する。

(裁判官 奥村義雄 小淵連 川口公隆)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例